2015年01月11日

こうして私は漫画家になりました


やったぜ。


…って、いやいや。まあ大筋はだいたいこの通りなんですけど、それだけだと話が終わってしまうので、もう少し掘り下げて。

なるべく思い出して書きますけど、間違いや記憶の上書きがないとは言い切れないので、そこはご愛嬌。
ちょっと長いかもです。肩の力を抜いて、一つのケースとして、暇つぶしにどうぞ。

熱い自分語り、はっじまるよー。


◆ 武田さんの描く女の子(ヒロイン)って、あんまり可愛くないんですよね

講談社の『ヤングマガジンアッパーズ』に、漫画の持ち込みをしていた時のこと。

原稿を編集さんに見てもらって、イスから立ち上がって帰り際、その時に言われたのが上の言葉です。
ほんと何気なく、最後に一言という感じで。

当時の状況としては、奨励賞あたりにはそこそこ引っかかるようになったものの、デビューはちょっとなぁ…くらいのレベルでしょうか。
他にも持ち込みは繰り返していましたが、なかなか突き抜けられずにいました。


この時より、もっと前の作品(多分、同人誌)


元々、女の子キャラは、苦手でもないけど得意でもなくて。
女の子を描き始めたのも高校に入ってから、部活の先輩に教わって覚えたくらいで。
(男の子やロボットやモンスターばかり描いていました)

要するに、それほど力を入れていなかったわけです。
きちんとしたお話を描く方が重要で、メインの男の子が重要で、女の子は最低限くらいでいいやという考え。

数ある足りない部分の指摘の一つ。
ショックというよりは、なんとなく腑に落ちない、もやもやした感じだったでしょうか。

ただ、その日言われたことの中で一番頭に残って、帰りの電車でずーっと考えていました。


描き続けていて何度も直して、そのたびに少しずつ前進しているつもりではあるけれど、歩みは遅く、まわりにはどんどん置いていかれるし、太陽は容赦なく頭上をまたいでいくし…
シナリオ、ネーム、キャラクターに絵…
問題は山積みで、何から手を付ければいいかわからない。
けど、何かしないと…

女の子が可愛く描けることは武器

そんな心境で、その言葉は妙に響きました。
今まで、話には聴いていたし、それとなく言われてはいましたけど。
読者として、絵がいいだけで中身のない漫画があまり好きではなかったので、ずっと後回しにしていたことでした。
多分、チューニングが合って、聞き入れる態勢になったってことなんでしょうね。

事ここに至って、そういうことも言っていられないと思って。
とにかく、少しでも前進するために、使える武器は一つでも増やしておいた方がいい。
今までそれほど重要視していなかったけれど、他の部分に比べて改善が目に見えるわかりやすい部分だし、とにかく挑戦してみよう。

その時、そういう風に思って、ギアをそっちに入れたわけです。

13891147.jpg

<単行本『にくまん♡あんまん』販促用カット>

この時の意識の切り替えがなかったら、今こういう絵になってませんでした。


◆ 紙の上の再会

それに前後して、同じ頃の時期のことです。

その頃住んでいた、東小金井のアパート近くの駐車場で、マンガ雑誌が捨ててあるのが目にとまりまして。
本や漫画が捨ててあると、中身を確認したくなるじゃないですか。なりませんか?習性として!

で、近寄って確認してみたら、何冊かのエロ漫画雑誌でした。
近所の学生さんでも、処分に困って捨てたのかしら?
そう思って、ページをめくっていると、その中の一冊『コミックドルフィン』の読者コーナーの中に、懐かしい絵を見かけまして。

よく見るとそれは、数年前にケンカ別れして、それ以来絶交状態の、高校の部活の友人のものでして。
実は、ホビージャパンや週刊少年チャンピオンでもチラチラ、それっぽい投稿を見かけてたんですけど。

なんというか、そんなカタチで再会してしまう自分たちの因縁が、面白いやら、情けないやら。
懐かしさと、なんだか逃れられない業(カルマ)の中にいる自分たちに、クラクラしてきまして。
その雑誌を拾って帰って。

気がついたら、ハガキを描いて、その読者コーナーに送ってました。

なんだろう、あまり深く考えてたわけじゃないんですけど。
そのハガキが載って、向こうがそれを見て、同じような因縁を感じてニヤリとしてくれればいいかしら、くらいの感じです。


この時、ペンネームの話にも書きましたけど、高校時代に使っていた「SABUROH」を引っ張り出します。
これも、今につながっています。


そのハガキが、『ドルフィン』に載りまして。
一回じゃ向こうも気がつかないかもしれないので、その翌月号にもハガキを出しました。

この時思ったのが、せっかくエロ漫画雑誌なのだから、女の子を可愛く描けるよう練習してみようということ。
先に話しました、その時の自分の課題、女の子(ヒロイン)を可愛くする練習にしてやろうということ。
転んでもタダでは起きない。

エロ漫画の読者さんが気に入る絵が描ければ、それは間違いなく武器のはずっ!…と、思ったわけです。
そのへんを意識しながら、エロ絵なんかも描いたりしました。

何度か送って、何度か載りました。
ちょうど、その雑誌で成年コミックの賞もあったので、とれたら向こうは驚くかなと思って、エロ絵の延長で、エロ漫画にも挑戦して応募してみたりもしました。

向こうの旧友も、どうやら気づいたらしく、反応するようなハガキを出してきました。
(※以下、この友人をDと呼称)

img157.jpg
その頃の、経緯を描いたハガキ
<「早瀬たくみのイラマン天国」1P漫画コーナー>より


そうこうしているうちに、いつの間にやら、その読者コーナーの常連になっていました。
友人Dとは、高校時代の共通の友だちを介して、連絡を取り合い親交が復活します。


そんな時です。
その雑誌の編集部、司書房から突然、電話がかかってきまして。

送ったエロ漫画で賞はとれなかったんですけど、編集長がハガキなどを見ていてくれたらしく、ショタアンソロジー本に8P描いてみないか?と誘われたんですね。

驚いたやら、うれしいやら。
こんなの、飛びつかないわけないじゃないですか。

頑張って仕上げて提出し、なんとか本に載りました。
再録本のスキマ穴埋めでしたけど、届いた本を手にとった時は、感激しましたね。

これが私の、商業漫画デビューです。




ついでなので、その後の顛末も一気に書きます。


◆ え、休刊? いいえ、倒産です

なんとかお願いして、アンソロジーの仕事も続けて描かせてもらえることになりまして。
その頃、東京から地元の福島に引っ越します。

原稿料が低くても、知名度がなくとも、原稿を描いてお金をもらって、一つ一つ積み上げて、ここから。
まずは単行本を一冊だそう。さあ、やるぞ。

そう思って、何本かアンソロジーの仕事をこなし。
新創刊するという雑誌『コミックベルーガ』にショートコラム漫画を描きました。

その2号目の原稿を執筆しているあたりですかね、その出版社、司書房がなくなるらしいと聞いたのは。
急に、今描いてる原稿をストップしてくれと言われたので、びっくりしましたね。

取り引きの停止や営業は、フリーランスである漫画家にはつきもので。
休刊はよくあることとは聞いていたけど、いきなり倒産は予想していませんでした。

まだ、何も積み上げていないのに。
きっかけの『ドルフィン』にも、結局、載れていないのに。
載りたかったなー。


というか、『アッパーズ』の前に持ち込みしていたのが『月刊ジャンプ』で、『コミックドルフィン』がこんな感じで、なにこの面白いの!漫画の神サマっ!


司書房は桃園書房と合併して、『ドルフィン』は『コミックジャンボ』と一つになって、まだ少し望みはあるかなーと思ったんですけど、やっぱりダメでした。
原稿料の未払いとかはなかったんですけど、このドタバタで、戻ってこなかった原稿が何本かありましたね。

その時の心境は、
「大変だ!ギャー><;」というよりは、
「わー、なんかすごいことなってる〜^^;」という感じでした。

多分、地方にいて、物理的・心理的に距離があったから、客観的になれたんじゃないかと思います。
ただでさえ、ここまでガチャガチャの人生なので、このくらい多少はね。


司書房がなくなって、ヒマしてました。
どこかに売り込みしなくっちゃ。

その時、声をかけてきたのが、先の友人Dです。
地元に帰ったので、時々、会ったり飲んだりするようになってました。

その彼が提案してきたのが、「ロリ漫画を描いてみない?」というもの。

仕事もないし、原稿は描かなきゃだけど、ネタもあまりなかったし。
自分の中にないものを描くのもアリかなと思って、引き受けました。

漫画は描き続けないとダメなんですね。結局は、それが道を開くから。
仕事がなくても、お金がなくても、誰にも知られてなくても、漫画を描き続けている限り自分は漫画家だから。
漫画家を名乗るのに資格が要るとしたら、たった一つ、それだけだと思うので。









そんなこんなで、リクエストを聞きながら、1本描いてみます。
「スク水」とか「ごっくん」とか、要求が細かく、なかなか大変でした。

描き上がったはいいものの、引き取り先もないだろうし、同人誌にでもしようかしら。

そう思っていたら、またDがうちにやってきて。
『コミックLO』を開いて、「ここに出せ」と言います。

書店で表紙は見かけて存在は知っていたものの、『LO』のことあまり詳しく知らなかったんですけど。

その時は、特にプランもないので、言われるままに送ってみました。
郵送での持ち込みですね。

これが、初めての営業活動になるのかな。
一応、もう商業デビューしているし、今までの持ち込みとは違うんだ!


それから、コミックハウスから電話で連絡があったんですけど、反応は鈍かったですね。

原稿事態のクオリティの低さもあったんですけど、自分がロリコンではないことを見抜かれまして。

私自身はショタコンで、ロリキャラに入り込めなくて、ショタキャラでネームを切って、下描き段階で受けのコのおちんちんを没収するという反則技で描き上げたんですけど。
そういうのは、やっぱり伝わってしまうみたいで。

やっぱり「本物」はちがうな、と。
で、『LO』には蹴られました。


そこで、その話は終わりかなー、と。
電話を切って、次はどうしよう、なにか手を打たないと、預金も少ないし…

そんな感じで、味の薄いご飯食べてたら、もう一度、電話が鳴ったんです。


またコミックハウスからで、なんでも、編集部内の別の編集さんに見せたところ、『コミックRin』の代理原稿としてなら使ってもいいよと言われたそうで。
もちろんOKしました。願ってもない!

これはうれしかったです、ご飯の味が戻ってきましたね。


それで、だったら何かお仕事くださいよー!と、でんぐり返ったところ、アンソロジーの仕事をもらいます。
また、アンソロジー!

それが、友だちの母親アンソロジー『ともはは』に載った「ぼくママ」です。
結果的には、こっちのアンソロジーの原稿が先に使われて、持ち込んだ原稿が『Rin』に使われたのが、その後という順番です。

img135.jpg

<COMIC RIN「オトナになるまで待てないの」>


そして、『ともはは』の原稿のママさんのむっちり具合を見てくれていた『ちょいS!』の編集長に呼ばれて、そこで「豊満」戦線に踊り出るという、単行本の隙間ページに書いたようなことになっていく感じです。


『にくまん♡あんまん』


売り込みの話は、ついこの間やらかした熱々のがあるんですど。
熱々すぎて、まだうまく語れる自信がないので、いつかそのうち。


◆ 道は一つじゃないし、正解もない

というか長いよ過去話!大暮維人かっ!ちょくちょく挟んでくるレイプ話、苦手っす!


というわけで、自分の場合はこうでした。
ジタバタ、すったもんだの挙句こうなって、今もバタバタしております。

よくよく考えたら、自分の知ってる漫画家さんのデビューも経緯もいろいろで。

賞→入選→読み切り→連載→大人気

こんなルートで、すんなり順調になんて人、自分が直接話を聞いた人の中では、そんなに多くないです。

どなたも皆さん、割とジタバタしながらプロになって、プロになってからもジタバタし続けて、今もそれぞれ頑張っています。

何者かになりたいのだったら、おとなしくスマートになんて思わないほうがいいです。
思いつく限りジタバタして、声をあげたほうがいいです。







物陰に隠れてうずくまって、声も立てずにじっとして、そんなんで、いつか誰かが見つけてくれるだなんて思うなよぅ。


【関連記事】
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「でも、結局は才能だよね」と言われた時に、一言だけ答えるなら


おおーう!若く愚かりしドタバタ話が、なんだか、若い人への教訓風におさまりそうですよ。えらそうなこと言い出しましたよ!?こわいこわい!
これは、グズグズしていられない!


お疲れ様でした!
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。


よし、にげろー。


【追記】
この頃に描いた作品は「マンガ図書館Z・R18」で公開しています。
よろしければ、読んでみてください。




Kindle版もあります。









posted by SABUROH at 19:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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